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地域課題というリサーチクエスチョン


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地域課題の言語化

「地域課題」という言葉が使われるようになって久しいですが、これは何を指す言葉でしょうか?「この地域の課題は何なのか?」という問いは日々行われているのに対し、「地域課題は何を指す言葉か?」という問いはほとんど行われていないということに気付いて、私は2020年にある自治体で「あなたが感じる地域課題は何ですか?」というインタビュー調査を行いました。行政職員、政治家、地域おこし協力隊、NPO、地場企業の経営者、農協、商工会議所など、様々な立場の方々のお話を伺いましたが、それぞれにレベル感の全く異なる「地域課題」が挙げられました。このように調査すべき地域課題を設定するのは意外に難しい作業です。しかし、地域課題を適切に設定できなければ調査・分析ができないことは明らかです。
では、EBPMを進める際にはどのように地域課題を設定すべきでしょうか。まず、業務主管課の方に「あなたが解決すべき地域課題は何ですか?」と聞いても、なかなか言語化できないようです。それでも何とか言葉化しようとして出てくるのは、新たに立案することになっている政策(事務事業)であることが多いです。しかしこれが最も良くない答えです。行政機関には様々な立場の住民から様々な意見が寄せられます。「〇〇に困っている」「〇〇は何とかならないか」という声であればまだ良いのですが、「〇〇をしてほしい」「〇〇はやらないのか」という声は目的が不明確であるために厄介です。しかし忙しさにかまけて目的を明確化すること・本質的な課題を掘り下げることが十分に行われないというのは、意外に多いのではないでしょうか。これが常態化している自治体ではEBPMの需要はほとんど生まれないはずです。「〇〇に困っている」「〇〇は何とかならないか」という声に対して、それが主観的な事象か・客観的に確認できる事象か?ごく一部の事象か・広い範囲で起こっている事象か?などといったように、政策問題であることを客観的に説明できるかどうかを確認する需要が本来あるはずです。「〇〇をしてほしい」「〇〇はやらないのか」という声に対しては、なぜそういうことを言ってくるのかをその人に確認する、その地域を見に行く、仮説を立てて検証するという方法があります。その上で本来の地域課題に翻訳する必要があります。

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自治体事例集

小出篤
小出篤
昭和50年、千葉県生まれ。システムエンジニアとして住民情報システムの開発・導入、コンサルタントとして市区町村における情報システムの最適化・投資の適正化・人材育成・計画策定を経て、地方行政経営研究所 フェロー、合同会社情報政策リサーチ&コンサルティング パートナー、Code for Kanoya 代表、自治体のDXアドバイザーなどを務める。公共政策修士(MPP)、経営管理修士(MBA)。
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